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2016年10月

2016年10月10日 (月)

朝日新聞に記事が掲載されました「ニホンノウサギが急減 里山のシンボル、東京で保護活動」

ニホンノウサギが急減 里山のシンボル、東京で保護活動

 

Nousagi_2唱歌「ふるさと」にもうたわれ、農村や里山などでふつうにみられたニホンノウサギが全国的に急速に減っている。ウサギの好む草地が減ったことなどが原因とみられる。公園内の雑草を刈らずにわざと残すなど、保護に向けた取り組みも始まった。

 

 「なかなか見つかりませんね東京都<八王子市の長池公園で7月末、草むらをかき分け、ヤブ蚊に襲われながら公園職員らとウサギのふんや草の食べ跡を探した。約1時間調べたが、結局見つけることができなかった。

 

 公園は多摩ニュータウンの一角にあり、広さ約20ヘクタールの都市公園。開発で消えつつある多摩丘陵の自然を守るため江戸時代からあるため池を中心に整備され、2000年に開園した。住宅地や道路に囲まれた場所だが、タヌキやアナグマなどの動物や約800種の植物が確認されている。

 

 ニホンノウサギも以前は周辺で多数みられたが激減。環境省が08年から赤外線センサー付きカメラをつけて調べてきたが年々減り、13年には一度もみられなくなった。ただ、今年5、6月に目撃情報が職員から寄せられた。周辺から草地の残る公園に移ってきたらしい。

 

 長池公園を管理する指定管理者「フュージョン長池公園」はウサギの隠れ家にもなる雑草を積極的に残したり、うっそうと茂った雑木林の一部を伐採したりして、ニホンノウサギが好む明るい草地を守ってきた。小林健人副園長は「ニホンノウサギは里地里山のシンボル的な存在。今後もニホンノウサギがすめる環境を守っていきたい」と話す。

 

生物多様性センターは「モニタリングサイト1000」という調査で毎年、各地の里地里山を対象に動植物を調べている。ニホンノウサギは09年には全国47地点のうち39地点と83%で確認されたが、14年には32地点中24地点と75%に減った。生息が確認された地点でも本州のほとんどの調査地点で減っている。調査を担当する日本自然保護協会によると、毎年約1割ずつ減っているという。

 

 ニホンノウサギは狩猟対象で70年代には年間100万匹以上捕獲・駆除されていたが、13年度には約1万匹まで落ち込んだ環境省の担当者は「狩猟人口は増えておらず、ニホンノウサギの好む草地などの環境が減ったことなどが原因に考えられる」と話す。

 

 以前は草木が定期的に切られ田畑の肥料や家畜の飼料、燃料に使われて草地が維持されていた。だが、最近は人の手が入らなくなり、やぶや森林が増えた。田畑の耕作放棄や宅地開発も影響している。

 

日本自然保護協会の高川晋一副部長は「身近なニホンノウサギが急速に減っているのに驚いた。今、草地など身近な里山環境が危機にあると知って欲しい」と話す。(小堀龍之)

 

     ◇

 

 〈ニホンノウサギ〉 体長は50センチほどで耳は7、8センチ。夜行性で、植物の葉や樹皮などを食べる。キュウシュウノウサギ、トウホクノウサギなど4亜種に分けられる。国内で一部野生化している飼いウサギ(アナウサギ)と違い、日本固有種や埼玉県など6都県は絶滅が危ぶまれる生物をまとめた地域版レッドリストに掲載している。国のレッドリストで新潟県にすむ亜種サドノウサギが「準絶滅危惧」に分類されている。

 

 

 

 

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